”センダックの絵本論 (単行本) ”

芸術家としての私に影響を及ぼしたのは、あの幼いころの−私自身も幼いころのミッキーです。私は自分の絵本の主人公のほとんどに自分と同じ頭文字を与えるという、カフカ的遊戯をしてきましたが、一度だけ非常に特別な人物を、あからさまにかの有名なるネズミ氏と混ぜ合わせました。私の絵本『まよなかのだいどころ』の主人公、ミッキーがそれです。子ども時代に楽しんだ非常に私的な空想を夢中で探索するに当たっては、あの幼いころの第一の親友におおっぴらに手をさしのべるのが、自然で正直なことだと思ったからです。『まよなかのだいどころ』は、過ぎ去った日々や場所への一種の讃歌−ディズニーの芸術はもちろんのこと、ローレルとハーディの喜劇や『キング・コング』、漫画本一般、そしてとりわけ、世紀の替わり目の新聞漫画で空想を繰り広げたウィンザー・マッケイへの讃歌です。(p116)

in the night kitchen

”In the Night Kitchen (Caldecott Collection)”
”センダックの絵本論 (単行本) ”

 『ピーターラビットのおはなし』がこんなにも生き生きしたものになったのは、事実とファンタジーが想像力によって混ぜ合わされて、うまく統合された調和的な働きをしているからだ、ということです。ここでのファンタジーは、生活上の事実に根ざしています。ここには家族という事実、楽しみや危険や恐怖という事実があります。人生のはかなさという事実があり、安全という事実、母親と愛情という事実が最後をしめくくります。まとめて言うならば、この本には、サイズはどれほどちっぽけであっても、生きることの感覚があふれているのです。そしてそれこそは、あらゆる芸術作品にあてはまる最高の価値ではないでしょうか? この価値基準は子どものための本すべてに適用されるべきものであって、それなしにはどんな本も芸術とは呼べません。『ピーターラビットのおはなし』は、おとなしくてちっぽけな本ではあっても、想像力なしにはどんな文章も書くに値しないし、どんな絵も描くに値しないと、声高に宣言しているのです。(p80-p81)

peter rabbit

”The Tale of Peter Rabbit”